自筆か公正証書か?
それでは実際に遺言を作る場合、自筆と公正証書のどちらで作るのが良いでしょうか?
遺言には次の3種類のものがあります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
このうちのどれかを選びます。では、他の人はどの遺言を作っているのか見てみましょう。
- 公正証書遺言 平成28年の作成件数 10万5350件
- 自筆証書遺言 平成25年の検認申立件数 1万6708件
- 秘密証書遺言 平成20年の作成件数 130件
自筆ではなく、公正証書でしっかりした遺言を残す人がとても多くなっています。
なぜ公正証書が選ばれるのでしょうか?
3種類の遺言を比較してみました。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
書き方 | 本人が、全文、日付、氏名を手書きで書く (ワープロ、代筆不可) |
本人から聞き取って公証人が作る | 自筆でもワープロでも代筆でもよい。証書に押した印で封印して公証人に持っていく。 |
証書への署名、 捺印 |
本人の署名捺印 | 本人、公証人、証人 | 本人が署名押印 |
証人 | 不要 | 二人以上 | 二人以上 |
封印 | 必ずしも封印する必要はない | 封印することはない | 本人が封印した封筒に、公証人、証人二人以上が署名押印する |
費用 | 不要 | 必要 | 必要 |
保管 | 本人や信頼している人 | 原本は公証役場、正本や謄本は本人や信頼している人 | 本人や信頼している人 |
紛失、変造等 | 紛失、変造等のおそれがある | 紛失、変造等することはない | 変造はできないが、紛失、隠匿等のおそれがある |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
証拠能力の疑い | 本人の筆跡か? 無理やり書かせたなど疑われることがある |
内容、本人の意思を公証人と証人が確認。疑いの余地なし。 | 内容は本人以外秘密だが、公証人と証人が確認。疑いの余地なし。 |
無効のおそれ | 作成方式の誤り、不備により無効になることが多い | 無効になるおそれがない | 作成方式の誤り、不備により無効になることが多い |
手続の手間 | 作るのは簡単、相続発生後は手間がかかる | 作るのは手間がかかる、相続発生後は簡単 | 作るのも相続発生後も手間がかかる |
「公正証書遺言」は公証人が公正証書で作る完全に有効で安全な遺言と言えますので、一番選ばれています。
「秘密証書遺言」とは?
遺言者が遺言書に署名・押印し、その証書を封筒に入れ、遺言書と同じ印で封印し、公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出し、自己の遺言書である旨、氏名、住所を申述し、次に公証人が封書に証書を提出した日付および遺言者の申述を記載し、遺言者・証人・公証人が、封書に署名押印するという方式で作成されます。
遺言内容を死ぬまで秘密にしたいときに使う方式であり、秘密保持と保管は確実ですが、方式不備で無効になるおそれがあります。また、自筆証書遺言と同様に家庭裁判所の検認手続きが必要です。
(「相続に関する用語集」より)
「検認」とは?
遺言書(公正証書による遺言を除く)は、遺言者の死亡後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求しなければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければなりません。
検認は、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など遺言書の内容を明確にして偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
検認手続きを踏まなかった場合は、5万円以下の過料に科せられます。
(「相続に関する用語集」より)