初めての相続税申告「5つの注意点」
多くの方にとって、相続税の申告は人生で一度経験するかどうかという事です。いざ申告が必要になった場合も、一体何をすれば良いのか分からないといった声がよく聞かれます。
さらに、2015年以降は税制改正で基礎控除が大幅に低減し、相続税申告の必要な方が、なんと180%も増加しました。これからは、相続税が資産家の方を対象にした税金とも一概に言えなくなってきているのが現状です。
ここでは、一般の方があまり正しく理解できていない相続税の注意点を5つの視点で、簡潔にご案内させていただきます。
1:相続税申告は、期限内に申告するとメリットが多い!
相続税申告の期限は、相続開始の翌日から起算して10ヶ月です。この期限内に申告することで、「配偶者の税額控除」や「小規模宅地の特例」など大幅に税金を減額できる特例が利用できますので、確実に10ヶ月以内に申告しましょう。また、申告が必要かどうかが分からない方は、まず専門家に相談してこの期間を逃さないように注意しましょう。
2:相続税の納税が0円でも申告が必要!
相続税についてご自身で勉強された場合ですと、例えば、亡くなった方と同居していたため、小規模宅地の特例で税金が0円になることを知り、それで安心してしまい、申告をしなかったというようなケースがあります。しかし、こうした特例が使用できるのは期限内に申告することが適用の要件です。たとえ、計算してみたら相続税の納税額が0円だったという場合でも、相続税申告は必要になってきますので、間違えないよう注意しましょう!
3:不動産の評価は、「 路線価 × ㎡数 」が基本ですが…プロはもっと正確に評価!
不動産の評価は、相続税申告の場合、「路線価」評価を使う事が原則となります。
ときどき、固定資産税評価額や地域の売買価格から勝手に算出して金額を設定したりと無茶苦茶な評価をされる方がいらっしゃいますが、相続税申告の場合の不動産の評価方法は決まっていますので異なる評価の場合は、差額に対して追加の課税となります。
また、専門である税理士や不動産鑑定士が関わることで、税務署の認める方法でもっと不動産の評価を下げることも可能です。極端な話をさせていただくと、普通に評価すると、8000万円の土地であっても、専門家が評価すると6500万円となるような場合もあります。こうなると支払う税金が、200万円以上も変わってきます。専門の税理士に報酬を70~80万円支払っても、お願いした方が一般の方にとっては100万円以上も得する場合もある訳です。
不動産の評価が難しい場合は、プロにきちんと相談して損をしないようにしましょう!
4:税務調査で追徴課税となる原因の大半は、預貯金の調査に原因あり!
相続税申告で、調査が入って追加で税金を持って行かれる場合の多くは金融資産の評価に問題があるケースが過半数を占めるようです。具体的には、預貯金の調査漏れです。
故人(被相続人)が亡くなった相続開始の日から、過去3年以内に相続人に渡した贈与は原則、持ち戻しとなっています。これは亡くなった父親が、相続人である息子2名に毎年100万円の現金を3年連続で行っていた場合、年間200万円、3年間で600万円分を父親の相続税の課税対象財産に持ち戻して計算をしなくてはいけないという事です。
これは、あくまで税金の計算上のためですから、実際にお金を返金する必要はありませんが、きちんと戻して計算しなくてはいけませんので、一般の方が自分で申告する場合には要注意となります。
また、一般の方が自分で相続税申告する場合、税務署は税理士が申告する場合よりも、抜け漏れが無いか厳しくチェックする傾向があるようです。これは一般の方が、相続税申告に詳しくないので過少に財産評価をして納税金額も過少である場合が多いからです。
5:間違って多く税金を支払った場合、請求しなければ返金されない!
相続税を含む所得税・法人税などの国税は、原則的に、申告納税主義で税金が徴収されます。
分かりやすいように、地方税との対比で説明すると、地方税は「この金額を支払って下さい」と行政機関から税金の請求が来ますが、これに対して、国税は自ら税金を計算して、自ら申告・納税する形になります。国税の注意点は、自分でこの金額だと思って申告して、多く支払っても税務署から「多いよ」とは言われません。逆に、少なく申告・納税した場合は、不足分の支払が要求されるだけでなく、過少申告のペナルティが発生する場合もあります。
相続税は国税ですので、専門家にきちんと計算してもらった方が間違いがないでしょう。